2010年07月21日

白内障入院手術体験記E

 隣のイビキのため、ほとんど眠れなかった。

 夜明けと共に外が明るくなったので、手術した左目の眼帯の上から手をかざしてみた。手術がはたして上手く行ったのか気になったのだ。

 上下、左右と手を動かした。すると手の動きと一緒に影が動く。ということは、光を失っていないのだ、と一安心した。

 向かい隣の方も起きだして来た。昨日は「期待していたほどは良く見えないし、ギザギザに見えるのが気になる」と、落胆していた。「今はどうですか?」と声をかけると、「昨日よりも良くなったようで、余り気にならなくなりました」と、ホッとした様子。そして私に対しても、「これから眼帯を外すのが楽しみですね」と気にかけてくれた。

 7時に看護婦がやってきた。「**さん、眼帯を外しますね」といい、ゆっくりとテープをはがした。眼帯が外され、恐る恐る、目を開いた。
  


 「・・・。うーむ・・・」「おお、よく見える!」「なんと明るいのだ!」と、しばし感動した。ベッドのシーツ、カーテンの皺までがはっきりと見える。

 挿入した眼内レンズは大体30〜60cmの距離に焦点を合わせている。これは術前の話し合いで決めた。しかし2m近く離れた所も、多少はボケるが充分見える。

 「こんなに違うとはなあ・・・」と声を上げると、「良かったですね。最初に眼帯を外すと、皆さん同じように感激します」と看護婦さん。同室の方も、「よく見えますか?」と一緒になって喜んでくれた。

 「術後のケアが大切です」と、3種類の点眼薬が渡された。化膿と感染予防の薬らしい。

 まだ手術していない右眼と交互に見比べたが、余りの違いにショックを受けたほど。例えば白い紙を見ると、手術した左眼は、勿論、真っ白に見える。だが、右眼は黄色っぽい色になってしまう。どちらかというと、セピア色に近い。なにより明るさが全く違う。正常な眼を100とすると、半分の50くらいの光しか取り込んでいないと感じる。「これじゃ、見えなかったはずだな」と納得。

 やがて8時の朝食が運ばれてきた。ご飯の粒、オカズがきらきらとして食欲をそそられる。こんなことにすら、感激するとは・・・。隣のご主人の奥さんもやってきた。またしてもお膳持参だ(笑)。お互い、手術が成功したので、話し振りも明るく元気になる。このご夫婦、この日の午前中に退院する。すっかり仲良くなったので、「是非、遊びに来てください」と誘われた。

 鎌倉に住んでいるといっていた。「観光のついでに、是非寄ってください」と住所を書いたメモを渡された。「そういえば、鎌倉といえばイィヴィさんじゃないか!」と思い出した。「ひょっとすると、このご夫婦、イィヴィさんのご両親か?」

 「我家のどら息子がハワイアンに狂ってましてねえ、困ったもんです」と嘆いていたような・・・(笑)。イィヴィさん、思い当たります?

 イビキで私の睡眠を妨害した隣の患者も起き出してきた。顔でも洗うのか、廊下に出て行ったが、我々の方を見向きもしなかった。内心、「バーロー!挨拶くらいしろよ!」と文句の一つも言いたかったが、いかにもケンカが強そうだったので、黙っていた(笑)。

 やがて戻ってくると、食器をカチャカチャと並べている様子。だが小さな声で、何か文句らしきことを言っている。「なんだよ!」「・・・がねーじゃねーか!」「これじゃ、食べられないだろう!」と、ブツブツうるさい。うるさいのは、イビキだけではなかった。

 どうやら、「箸がない!」と、怒っているようだった。

 昨夜緊急入院したから知らなかったのかも知れないが、この病院では、日常使うもの、例えば、パジャマ、歯ブラシ、石鹸、或いは、箸やスプーン、カップなどは患者自身で準備することになっている。

 「ざまあみろ!」と無視しても良かったのだけど、そこは、いつも周りから「上品な紳士」と言われている私だ(笑)。ついつい、「箸がないんですか?」とカーテン越しに声をかけた。驚いたように、「はあ、そうなんです。箸を忘れるなんてね」「いや、自分で用意するんですよ」というと、「ありゃ、そうなんですか、参ったな!」と困惑している。

 私は、マイ箸の他にも割り箸セットをいくつか持参していたので、「割り箸ですけど、差し上げましょうか?」といいながら、カーテンのすき間から差し入れた。「あー、すみません、ありがとうございます」

 「意外と素直な奴じゃん!」と、それまでの悪印象が少し改善された。

 お昼近くになると、向隣のご主人が帰り支度を始めた。奥さんもやって来て、何くれと無くご主人を助けている。下着から、上着、ズボン、靴下まで一つづつ渡している。まるでお殿様だ。

 支度が終ると、同室の方々に挨拶して部屋を出た。なんとなく別れ難く、エレベーターの所まで見送った。別れ際、ご主人と奥さん「お陰さまで楽しい入院となりました。本当に遊びに来て下さいよ」と念を押された。

 部屋に戻ると、看護婦がやって来て、「午後から術後の検査があります」
 
posted by Boo! at 22:20| 東京 ☀| Comment(2) | 健康・運動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
手術の成功も喜ばしきことですが、同室の方々との記述も興味深いところがあります。積極的な「ことば」、「はたらきかけ」そして時間の経過が人とのお付き合いを徐々に進めていくのですね。

最近出会った言葉:
「こころ」は誰にも見えないけれど、「こころづかい」は見える。
「おもい」は見えないけれど、「おもいやり」は誰にも見える。
Posted by きぃばつ at 2010年07月22日 21:33
きぃばつさん

>人とのお付き合い

 それまでまったく見も知らぬ方でも、ちょっとしたことから、親しくなります。顔を合わせても挨拶もせず、知らん振りしていたら、永遠にその機会はないでしょう。結局は本人の気持ち次第で、どうにでもなるようです。

 ブログもそうです。もし立ち上げてなかったら、きぃばつさんを始め、皆さんと知り合うことはなかったでしょう。

>最近出会った言葉:

 なるほど、良い言葉です。これがたぬきさんだったら、次のようになりますかね?

 「こころ」は誰にも見えないけれど、「嫌味」は見える。
「おもい」は見えないけれど、「意地悪」は誰にも見える。
Posted by Boo! at 2010年07月22日 22:40
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