2010年08月20日

白内障入院手術体験記I(終)

 無事に手術が成功し、両眼とも視力が戻った。術後の経過も順調で、痛みや違和感がまったくないのは幸いだった。「本当にレンズが入っているのだろうか」と、疑いたいくらい。

 退院の許可が下り、荷物の整理にかかった。といっても、僅かな数しかないから、短時間で終了。久しぶりに外に出られるのは嬉しいけど、入院中は入浴はおろか、洗顔、洗髪が禁止されていたので、せめて、体を拭いて退院したいと思い、バスルーム使用の許可を貰い、シャワーを浴びた。

 目に入らぬように、慎重にシャワーをかけた。それも首から下だけ。石鹸を少しだけ使った。シャンプーで髪を洗いたかったが、これはまだ厳禁なので、熱いお湯でタオルを絞り、何回か拭くだけにした。髭も大分伸びた。石鹸が目に入るとまずいので、お湯だけで軽く剃った。余りにも見苦しい髭づらで外に出るのは、紳士たる私のプライドが許さない(笑)。お陰で、大変サッパリした。

 病院での最後の昼食を同室の方々と談笑しながら食べた。たった5日間だけの入院なのに、なんだか別れるのが惜しくなった。食事を終えると、改めて一人一人に挨拶をしながら、一日も早い退院を祈った。

 病室を出ようとすると、例のイビキ患者もついて来て、エレベーターのところまで見送ってくれた。嬉しかった。イビキでは悩まされたけど、話してみると気性のサッパリした方だった。

 7階から1階に下り、入退院手続き窓口に直行した。必要書類を提出すると30分ほど待たされ、計算書が渡された。記載された金額を自動精算機で支払うように指示された。最近の大病院はどこもこのようなシステムになっているようだ。だが、機械に弱い高齢者は大変なのではないか?付き添いでもいればいいが、もし一人で来院したら、相当にまごつくだろうと心配する。

 入院手術費用は4泊5日で約15万円弱だった。両眼手術だが、これが安いのか高いのかは分らない。しかし、この費用は後日の保険金請求で何倍にもなって返って来た。だが、保険金を貰うのは今回が初めてだし、これまでに相当な額を支払い続けてきたから、この程度貰うのは当然か・・・。



 全てを精算し終え、病院を出た。病院から地下鉄駅まで5分ほど。途中、歩道脇に置かれたプランターの花々が色鮮やかだった。それは眩しいほど。きょろきょろと街並みを見ながら歩くのは楽しかった。今までだったら、関心もなく通り過ぎていた。しかしよく見えるようになると、こうまで気持ちの持ち方が変わることを実感した。

 地下鉄駅構内への階段を下りる。券売所、改札口を通り、ホームに下りたが、案内板の文字がしっかりと読めるから自信を持って歩ける。足取りも颯爽としているような気分。途中、JR線に乗り換えるために下車。一旦外に出る。そのままJR線の改札口に向かおうとすると、どこからか音楽が聴こえて来た。

 「うん?」思わず音のする方向に足が向いた。駅前広場で4人の男性が楽器を弾きながら唄っていた。どこかの国の民族音楽だ。恐らく中南米、それもペルーあたりから来たと思われる。ケーナ、パンフルート、ギター、Perc.などを弾いていたからだ。中々、上手かった。

 しばらく聴いていると、一人の男が近づいてきて、CDを私の目の前に突き出した。「買ってくれ」ということらしい。ハワイアンなら、即、買ったと思うけど(笑)、やんわり断った。恨めしそうな目をして離れていった。

 しかし5曲ほど聴いてから、彼らの前に置かれた小さな箱に1000円もの(笑)チップを入れた。一斉に「アリガトゴザイマス!」の言葉が返って来た。内心、「これは、君たちのためというよりも、私の快気祝いでもあるんだ」と言いたかった。

 JR線に乗り、更に私鉄に乗り換え、やっとわが街の駅に到着。妻に電話をし、迎えに来てもらった。以前だと、迎えに来てもらっても車が判別できず、パッシングしてもらった。いまやそんなことは必要ない。向こうの方から走ってきた車をすぐに見つけることが出来た。手を振ったが、車に乗り込むと、「本当に見えるようになったんだね。あんなに離れていたのに手を振っていたから、ビックリしたわ」と感心していた。

 久しぶりの自宅に帰り、しばし部屋を眺め回した。なにもかも明るく美しくなったので、我家も美しくなったかなと期待したがそれほどでもなかった(悲)。むしろ、あちこちの壁やフロアのシミ、傷が目に入り、やけにそれが目立つ。「むしろ術前のほうが良かったかも・・・。みんなぼやけてホコリもシミも傷も、まるで分らなかったから」

 それでも、「狭いながらも楽しい我家」だ。やはり、落ち着く。

 しばらくの間は点眼が必要だし、大学病院を紹介してくれた近くの眼科医にも週に1回ていど通院する必要がある。先月には一ヶ月後検診があり、大学病院に行った。全く問題ないそうだ。

 眼科医に処方されたレンズでめがねも作った。運転用、伊達めがねの2種類だ。めがねのかけ替えが面倒といえば面倒だけど、しかしピントの合うめがねは気分がいい。テレビの文字もよく見えるし、新聞も楽勝だ。運転しても、遠くの信号名、標識文字、看板などがはっきり認識できるので、本当に楽だ。以前は、細い路地を曲がろうとしてよく見落とし、行き過ぎることがあった。自己嫌悪に陥ったものだ。現在は「スイスイ」です(笑)。

 皆さんの中にも、眼で悩んでおられる方がいるかもしれない。自己判断せず、一度眼科医で診察してもらうことを強く勧めます。また視力が合わないまま、我慢して日常生活を送ることも賛成しません。

 私の白内障が分ったのは5年前です。いくら検眼で0.8や0.9が出ても、実際の見え方は0.3以下だったでしょう。こちらから手術の相談しても、検眼結果ばかりを重視して「まだ」と言い続けられました。患者の言い分や気持ちを聞こうとしない医者に失望し、別の医者に相談した所、「よく今まで我慢してましたね」と驚かれたほどです。確かに無駄な手術はするべきではないでしょう。しかし、見えないまま、不自由を感じながら、この先、5年、10年と過ごすことに、なにか意味があるでしょうか?そして、足腰が弱り、頭の働きも悪くなって手術しても、これもあまり意味がないでしょう。まだ元気な内に手術して、正常な視力を取り戻し、前向きな気持ちで仕事や遊びに熱中したほうがどれだけ生活の質(QOL)が向上するでしょう。

 今となっては、手術前の5年間という時間を返して欲しいとすら思っています。眼は大事です。けっして甘く見てはいけません。長々と手術記を書き続けてきました。脱線もしました(これは得意!)。少しでも、お役に立てば幸いです。今回が本当に最後です。有難うございました。


 最後に一言。「一年に一回の眼科検査」を受けて下さい。人間ドックでの視力検査だけでは不十分です。視力検査の他に、眼圧、眼底検査、視野検査が重要なのです。白内障よりも怖い「緑内障」がありますし、最近では「加齢黄斑変性症」が増加しているそうです。一部の視野が欠けるとか。「網膜はく離」も多いといっていたなあ・・・。
posted by Boo! at 23:18| 東京 ☁| Comment(10) | 健康・運動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
OPE成功の結末が分かっていましたので、安心して読めました。

入院中の同室の患者さんや同じ手術を受けた患者さんとの絆は退院後も続くことが多いと聞いています。特に私の義兄のような大手術の場合は、術後の情報交換には大切な役割を果たしています。
Posted by きぃばつ at 2010年08月21日 23:54
きぃばつさん

>安心して読めました。

 
 長いお付き合い、ありがとうございました(笑)。


>患者さんとの絆は退院後も続くことが多い

 さもありなんですね。特に長期入院となったら、家族のようなお付き合いになるかもしれません。逆に言うと、もし気の合わぬ方と同室になったら、悲惨ですね。

 完治するのであれば、たまには入院もいいかもしれません。ただ、退屈でしたが・・・。
Posted by Boo! at 2010年08月22日 00:28
はじめまして。母親が白内障による手術を予定しているので、手術・入院の体験記を探しておりました。

術前から術後に至るご体験やお心の動きを知ることができ、たいへん参考になりました。ありがとうございます。

また、比較的短い期間とはいえ、同室の患者さんとの関係が入院生活の質に大きく影響するものだと知りました。同室の方がたにお声をおかけになったことで、みなさまのその後の入院生活も、よきものに変わったのではないかと思います。

おって、ジャズ関係の記事も拝読いたしたいと存じます。
Posted by オールドタイム at 2011年05月13日 17:48
オールドタイムさん

 初めまして。コメント有難うございます。

>母親が白内障による手術を予定

 そうですか。ご心配でしょうが、手術そのものは短時間で済みます。

 私の母は90才の時に両眼を手術しました。かなり高齢だったので「こんな年で手術しても大丈夫ですか?」と医者に訊きましたら、「100才でも可能です」と云われました。

 むしろ術後のケアが大切です。折角手術したのに、無意識に手や指で眼に触れたり、汗が入ったり、洗顔したり・・・で、細菌が入って化膿する恐れがあるからです。

 ですから、簡単になったとはいえ、入院することをお勧めします。

>同室の患者さんとの関係

 とても大事だと思います。ただ、中にはあまりおしゃべりしたくない方だっていますから、その辺の空気を読むことが大切でしょうね。

 手術の成功をお祈りします。報告でもしていただけたら幸いです。
Posted by Boo! at 2011年05月13日 23:02
母の手術について暖かいお言葉をいただき、ありがとうございます。

母は来週、6日間の入院で両眼の手術を予定しております。

週末にBoo!様の手記(勝手ながら抜粋させていたきましたが)を母に読ませたところ、本人なりに手術の様子など理解した模様です。痛みには強い性質なので大丈夫とのことです。

母はいま70代ですが、30代に耳鼻科の手術で1か月ほど入院を体験しております。その際は同室の患者が女性ばかりで和気あいあいとしており、ある患者などは見舞いに来た母の妹が気に入り、「息子の嫁に」とまで言われたりしたと思い出を語っておりました。

手術が終わりましたら、ご報告いたします。
Posted by オールドタイム at 2011年05月16日 19:42
オールドタイムさん

>6日間の入院

 余裕を持った入院ですね。

 痛みはそれほどではないので、心配ないでしょう。ただ、眼ですから神経質になります。
 私の直前に手術予定だった女性は、緊張のあまり血圧が上がってしまい、翌日に延期しました。

>女性ばかり

 そうなんです。男性よりも女性のほうが順応性があり、すぐに仲良くなれるようです。それは、会社をリタイアした男性共を見ればよく分かることです(笑)。
 女性は地球のどこに行っても生きていけますが、男性は難しいかもしれません(悲)。
Posted by Boo! at 2011年05月16日 21:23
母の白内障手術、おかげさまで両眼とも無事に終わり、退院いたしました。今は自宅のアジサイの葉の緑色の鮮やかさ等に感激しております。

入院中は、同室の婦人患者たちとまたたく間にうちとけ、他所様の家庭事情の打ち明け話などあれこれ聞かされたとのことです。おっしゃるとおり女性の順応性の高さに感心しました。

今回、病気や手術を不安に思う患者の救いとなるのは、医者の言葉もさることながら、同様の体験をされた方からの励ましであると感じました。暖かいお言葉をいただいたことに再度、お礼申し上げます。

当方、以前電子楽器メーカーに勤務しておりましたので、アンプ選びのご参考など提供できればよろしいのですが、弾くのも聴くのももっぱら歪んだ音でしたので、スチールギターのためのクリーンな音には疎く、申し訳ありません。

ともあれ、デジタルモデリング技術が進歩したとはいえ、真空管の音を求められる方にはホンモノの真空管アンプが一番かと思います。「聴感上は同一」と技術者に言われても、精神衛生上?は納得し難いもので……。
Posted by オールドタイム at 2011年05月30日 21:08
オールドタイムさん

 無事に手術成功したとのこと、おめでとうございます。安心したことでしょう。

 目に入るすべての色に感激するお気持ちはよく分かります。これは、手術した者にしか味わえない気持ちでしょう。

 お母様も社交的な方のようで、ある意味、息抜きのできた入院だったのかもしれません。

>暖かいお言葉をいただいたことに


 いえ、いえ! そんなに感謝されると、気恥ずかしいです。


>以前電子楽器メーカーに勤務しておりました


 おお! それは心強い方が仲間になりました。是非、これからはアドバイスを頂きたいです。

 音に関しては、技術者と弾き手、或いは聴き手の立場で、とらえ方が違うようですね。いくら数値的に優れていても、聴感上で良い音に聴こえないと、評価できないものです。

 これは聞いた話ですが、国内のメーカーがヨーロッパの一流オーケストラの奏者から依頼され、Tpを試作しました。世界的にも評価の高かった楽器を参考にし、あらゆる角度から解析し、数値的にはそれと同じもの、あるいは、それ以上のものができたはずでした。しかし、奏者からは「No」ばかり。メーカーの考えは、金属に含まれる不純物をできるだけ取り除けば美しい音になるはず、と考えたそうです。

 最終的には、金属に何かを混ぜてみたところ、「この音だ!」と納得してくれたそうです。これは、とても示唆に富んでいますね。決して、不純物ゼロがいいとは限らず、多少、何かが濁っていたほうが人間の耳には心地よいということでしょうか。デジタルとアナログの違いでもありますね。


 私は理論的なことは、全くわかりません。あくまでも、自分の耳を信じて、音を聴いています。正反対の評価でも構わないのです。
Posted by Boo! at 2011年05月30日 22:41

「金属に含まれる不純物がトランペットの音色の肝」のお話、大変面白いと思いました。

「アナログ時代のテープ式エコーのベストセラー機の音色がミュージシャンに好まれたのは、実はワフ&フラッター(死語?)による揺らぎのせいであった」という話を思い出しました。それを知らぬ後発メーカーが動作精度を高めるのに注力するのを見て、ベストセラー機の開発者はほくそ笑んでいたとのことです。

フレットレスのスチールギターはともかく、そもそもギターなど所詮は音程の怪しい楽器ですし、聴き手の聴覚の周波数特性だってひとさまざまなので、おっしゃるとおりご自身の耳に心地よい音が一番かと思います。

とはいえ演奏技術の面では他人様の批評に謙虚に耳を傾けるべきなのですが、私にはこれが難しいです……。
Posted by オールドタイム at 2011年06月01日 22:23
オールドタイムさん

>テープ式エコー

 専用機ではありませんが、昔、4トラックのオープンデッキを持っていました。この各トラックの音を少しずらすことによって、エコーがかかりました。音が深くなったようで、結構気に入っていたことを思い出しました。

>ギターなど所詮は音程の怪しい楽器

 確かに。楽器すべてがそうなのだと思います。そもそも、現代の平均律そのものが、悪く言えば、狂った音でしょう。割り切れないわけですから。人間の耳はうまくそれに順応できることで、正しく聴こえたりするのでしょう。面白いですね。

>他人様の批評

 自分の批評と違って当たり前でしょう。ただ、押し付けたり、押し付けられたりすることは嫌ですね。


Posted by Boo! at 2011年06月01日 22:46
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