2013年04月24日

友の入院

 大学時代、サークルで一緒だった友人が手術入院した。

 学部は異なったものの、新入生部員として一緒に入部した。サークルではギターを担当した。高校生の頃から多少かじっていたらしく、まだ何も弾けなかった私よりも、スタート地点が前だった。

 地方の資産家の一人息子で、学生の分際で随分と優雅な生活を送っていた。特に母親の溺愛は大変なもので、毎月の仕送りが5万円と言っていた。大卒初任給2,3万円の時代にだ。私の実家は下宿屋を営んでいたが(母の副業だった)、賄付で確か1万円以下だった。

 許せないと思ったのは(笑)、大学を出て、就職し、給料を貰う身になっても、親からの仕送りが続いたことだ。恐らくサラリーよりも多かったはずだ。「結婚してからは貰っていない」と言っていたが、これは本人の弁だ。真実は母親が亡くなるまで続いたのではないかと疑っている。それが証拠に、給料とは釣り合わぬ高級車を乗り回し、酒、食事に贅沢の限りを尽くしていた。

 しかし気性は大変ストレートで、豪快さと繊細さをもちわせていた。きっぷがいいから、女性にも男性にも好かれた。まあ、良い意味での「お坊ちゃん育ち」だったのだ。
 
 大学二年の時、「今度新しいアパートに移る」と言った。「お前の住所に近いようだ」と言ったので確認すると、驚いた。なんと実家から歩いて5,6分の所。別に私を追いかけてきた訳ではなく(笑)、偶然だったらしい。しかも、そこの大家は母の知人でもあった。

 それからというもの、付き合いが一気に濃くなり、月に一度は、お互いに訪問し合い、泊まり込むこともしばしばになった。ある日、夕食に彼を招き、食事していたら、父が帰宅した。酒の好きな父と3人で酒盛りとなった。柔道で鍛えた父の酒はとんでもなく強い。私では全く相手などできない。だが友人も強かった。途中からは二人で競うように飲み続けた。親父も珍しく対抗馬が現れて、負けたくなかったのだろう、ムキになった。

 しかしさすがに若い友人には負けた。遂に父はダウンしてしまった。すると彼は父をそっと抱き上げ、布団に寝かせた。父は年齢にしては、大きいし、重い。私が父を背負ったことなどなかったから、ビックリした。と同時に、彼の優しい一面に触れ、「こいつとは一生の友になるかも」と思った。

 その思いに誤りはなく、現在まで親しく付き合っている。

 ただ当時から、「不整脈があるんだ」とよく言っていた。しかし私にはその意味がよくわからず、「ふーん」とうなづくのみだった。やがて心臓病の一つであることが分かり、心配した。「余り無茶するな。酒もほどほどに」と忠告したが、そんなアドバイスを聞くような彼ではない。

 お互いが結婚生活に入ると、中々、会えるチャンスがなくなった。だが相変わらず、仕事にかこつけては毎晩のように飲んでいるという噂は耳に届いた。そして私の心配は現実となり、仕事の出先で倒れた。心臓が停止し、失神したのだ。幸いにも手当が早かったため、命拾いした。その後も何度か発作を起こした。

 早期退職したが、それでも無茶なペースを変えない。「もういい加減におとなしくしろ。俺のように清らかな生活を目指せ」と言ったが、「ふふ・・」と笑って誤魔化す。

 2年前からは、ゴルフ場、電車内、飲み屋で倒れ、自宅でも入浴中に気を失った。電車内では、立っていたら気が遠くなり、気が付いたら病院だったそうだ。周りの乗客も驚いただろうなあ。遂に昨年は、ほとんど外出もままならず、薬療法を受けた。それにしても彼は強運だった。どこで倒れても必ず身近に人がいたからだ。そうでなかったら、とっくに死んでいてもおかしくない。

 心臓は考えていたよりも重症で、とうとう手術を余儀なくされた。「今のままでは、余命2年以内」と脅かされたそうだ。今年の2月を予定していたが、体調が整わず、3月にずれ込んだ。心臓手術では世界的に有名なS記念病院に入院した。

 彼からの無事退院報告を待った。先日やっと電話がきた。思いの外、元気そうな声でホッとした。10日間ほど入院したらしい。「心臓手術なのに、次の日には歩かせるんだぜ」とぼやいていた。「これであと10年は生きられそうだよ」と言い、「心配かけて、済まん」と珍しく殊勝な態度だった。

 「よかった。これからは体が第一だ。好きな酒もやめた方がいい。もう一生分以上飲んだはずだ。まさか、飲んでいないだろうな?」
 「もう飲んでいるよ!」と、涼しい声。
 「反省しないやつだな」
 「だって、医者が一合までならいい、と言ったんだもん」
 「なにが、もん、だ!」

 まったく懲りない奴だ。ま、そこが彼の愛すべきところでもある(笑)。

 もう少し元気になったら、快気祝いをしたい。 
posted by Boo! at 21:47| 東京 ☀| Comment(4) | 健康・運動 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こちらも今晩は中学の友人と飲んできました。

昔の仲間が良いのは歳をとってきたからでしょうかねえ・・・?
Posted by たぬき at 2013年04月24日 22:57
たぬきさん

 たぬきさんもあまり飲みすぎてはいけませんよ。ほどほどにね?

>歳をとってきたからでしょうかねえ

 それも一つの理由でしょう。しかし、昔の仲間すべてと気が合うわけではありません。いつまでも肌の合わぬやつもいます。

 それでも子供時代、学生時代を一緒に過ごした連中とは、色々なことを超越してしまいますね。何年もブランクがあっても、一気に昔に戻ります。人生の中でのたったの3年間、あるいは6年間という限られた期間一緒だっただけなのに、不思議です。
 それに比べて、社会人になってから親しい友人をつくるのははるかに難しいようです。

 ですから、オフ会で皆さんと親しくなれたことは、貴重です。大事にしたい関係となりました。よろしくね。
Posted by Boo! at 2013年04月24日 23:27
たぬきさま
どうもオフ会一斉送信しますとたぬきさまだけアンノーンでリターンされますが、到着してますでしょうか。確認です。

阿羅漢さん Paulさん 課題曲2曲の曲名をお願いします。
Posted by あたごウクレレ at 2013年04月27日 11:10
あたごウクレレさま。

おかしいですねえ。
演奏曲は到着しています。
ご安心ください。
Posted by たぬき at 2013年04月27日 20:37
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