2008年02月24日

「Reborn」小曽根真/The Trio

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 私はジャズをことのほか愛する人間であるので、LPレコードやCDを人並み以上に所有しているとは思う。しかし、その数多くのアルバムの中で、いわゆる日本人ミュージシャンによるものが、一体、何枚くらいあるのかと考えると、正直、淋しい限りだ。数えるほどしか持っていない。

 私の周りには、現役のジャズ・ミュージシャンが何人もいる。いづれも国内ミュージシャンとしては高い評価を得ている。色々なアルバムにも参加しているし、リーダー・アルバムを出している者もいる。こちらも応援したい気持ちがあるから、発売される度に、できる限り買うようにしている。しかし、そのようなお義理や人情で買うのではなく、純粋に「これは良い!」と思って、自分の意思で買ったものは皆無に等しい。このギャップが問題だなあ・・・。

 日本では、依然として根強い人気を保っているアルトのSWやTPのTHといった人たちのアルバムなんか、一枚も持っていない。はっきりいってしまえば、買おうという気持ちが起きなかったからだ。好きでもないし、嫌いでもない、恨みもない(当たり前か・・(笑))。

 だが私の本心はむしろ、「思わず買いたくなるような、魅力的なプレーヤーが早く出てこないか!」というのが、偽らざる心境なのだ。アルバム録音時やスペシャル・ライブなどで、米の一流ミュージシャンをバックにして売り出すやり方を良くみるが、こんなやり方は私は全く評価しない。こんなのは一種の上げ底みたいなものだからだ。それよりも、野球のイチローや松井のように、米から強くお呼びがかかるようなスケールの大きい才能豊かなプレーヤーが出て欲しい。そういう意味では、穐吉敏子さんは凄い。未だにこの人を超えるような存在感のあるプレーヤーは出ていないからだ。それもちょっと情けないが・・・。何故、この人の評価が米で高かったのか・・。それは何といってもオリジナリティに優れていたからに他ならないからだと思う。今では、穐吉さんより上手いプレーヤーは、日本にはごろごろいるだろう。ピーターソン・スタイル、エバンス・スタイルで見事に弾いたり、或いはコルトレーン風にバリバリ吹くものも珍しくない。でも、オリジナリティは無い。その人だけが持っている個性が見えない。

 それはスチールギターの世界も同じだ。バッキー・スタイル、オッパチ・スタイル、或いは、j.ア−・シー・スタイル、j.バード風で上手に弾くプレーヤーは何人もいるだろう。寸分違わず弾ければ確かに素晴らしい。でもそれは我々アマチュアだけに許される特権みたいなもので、プロには許されない。音だけでその人と分る個性が無ければならない。でも現在の日本にはそんなスチールギター・プレーヤーはまずいないだろうなあ・・・。必ず、誰かしらのスタイルに当てはまってしまう。

 話が脱線してしまった。肝心のこのアルバム。買ってみたくなる数少ない日本人プレーヤーの一人、小曽根真のリーダー作だ。文句無く、素晴らしいアルバムだ。

 彼がまだ小学生の頃、TVの特番で父親(かつてのハモンドオルガン奏者だった)が彼を特訓する日常を映像に収めたドキュメンタリー番組があった。小学生とはいえ、すでにジミ−・スミスが真っ青になるくらいバリバリにオルガンを弾きまくっていて、「イヤー、凄いガキがいるもんだな」と感心した覚えがある。普通はこのようにマスコミに紹介されると、すぐに「ジャズオルガンの神童」とかいって早々にアルバムを出したり、プロデビューしたりするものだが(これで、何人が消えていったことか・・・)、彼が偉かったのは、実に、地に足をしっかりつけた考えを持っていたことだ。これは父親が冷静だったのかもしれないが・・。もっと実力をつけることが先決とばかり、高校を卒業すると米のバークリー音楽大学に留学する。そして見事に首席で卒業した。この学校はトップで卒業すると、特別演奏会の場を与えられ、事実上、プロとしてのデビューの機会ともなる。その時共演したのが、バイブのゲイリー・バートンだった。大学でも指導を受けていたらしい。この時の演奏が確か、かれのデビュー・アルバムになったと記憶している。

 テクニックの素晴らしさは勿論、音色、フレーズの美しさ、洗練されたハーモニー、どれをとっても一流だ。日本だけで活動するのは勿体無い。米に殴り込みをかけてほしいくらいだ。ここまでピアノを弾きこなすプレーヤーは米にもそうはいないだろう。

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 CD盤。2003年録音。小曽根真(P),James Genus(B),Clarence Penn(Ds)
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2008年02月01日

「COLE PORTER SONGBOOK」 HARRY ALLEN

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 ハリー・アレンは現在の若手(もう若手とはいえないか・・)の中で最も好きなテナーマンだ。1966年生まれだから、41歳かな。

 若いのに古いジャズナンバーを積極的に取り上げるが、その演奏にはやはり若い感覚が入っているので、新鮮に聴くことができる。音色は素晴らしいし、アドリブもよく唄う。しかも、分りやすい。

 プレイを聴くと明らかにスタン・ゲッツの影響を感じさせる。本人は他にズート・シムズからも影響を受けたと述べている。ベン・ウェブスターの影響も感じる。

 そういえばここの所、彼のようにオーソドックスなジャズ・スタイルに回帰する若いプレーヤーが増えてきたように思うのは私だけだろうか?同じテナーのスコット・ハミルトンもそうだし、ピアノのベニー・グリーン(このアルバムにも参加している)も大活躍だ。ベースのクリスチャン・マクブライドはレイ・ブラウン亡き後、最も良き継承者と言える。

 ジャズ界はあまりにもコルトレーンの影響が大きかったので、コルトレーン風やモード奏法が主流になってしまった感があるが、彼らのように伝統的なジャズを尊重する流れが出てきたことは健全なことだと思う。どんなに良いものでも、偏りすぎた流れは良くない(かつてはコルトレーン狂いだったのだが・・)。

 このアルバムは大作曲家であるコール・ポーターの作品を集めたものだ。全17曲中、13曲がピアノのベニー・グリーンとのデュオだ。残りの4曲にギターとベースが参加している。

 ハリーをサポートするグリーンのピアノが素晴らしい。実にドライブ感に溢れ、ダイナミック。

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 CD盤。2001年録音。Harry Allen(Ts),Benny Green(P),Russel Malone(Gt),Peter Washington(B)
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2008年01月11日

「Where Fortune Smiles」 John Mclaughlin/John Surman

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 現在の比較的若いジャズファンには、J.サーマンと言う名前は余り馴染みが無いかもしれない。1970年代に入る頃から特に活躍するようなったと記憶している。

 当時、日本の一部のジャズファンの間で、熱狂的に彼を支持する動きがあった。一般的なジャズファンというよりも、プロ、アマミュージシャンに注目されるようなった。

 初めて、彼の吹く音を聴いた時、テナーにしては高い音だし、アルトかなと思った。だがソプラノのような音も出す。更に聴き続けると、今度はバリトンサックスのような低い、太い音を出す。解説を読むと、バリトン奏者と書いてあり、その驚異的な音域の広さには驚いた。それもバリトンの音域からソプラノの音域まで一気に駆け上がり、それでいて不自然なところがない。実に自然なのだ。正に、バリトン奏法の革命者だった。

 コルトレーン亡き後、新しいジャズを模索する彼のプレイは新鮮で、一時のめり込んだ時期があった。

 このアルバムはJ.マクラフリン(当時はマクローリンと読まれた)との共作だが、マクラフリンも云ってみればギターの革命者であろう。圧倒的なテクニック、色彩豊かなハーモニーは彼独特のものだ。ジャズ界に入る前はロックギタリストとして活躍し、クラプトンやG.ベックなどとも共演した。だから、いわゆるジャズギターのような印象がないのだろう。ジャズ界に転じてからもキャリアは凄い。M.デイビスやT.ウィリアムスの話題作にも参加している。だがなんといっても有名なのは、マハビシュヌ・オーケストラを結成したことだろう。これはジャズ界にかなりな旋風を巻き起こした。

 新しい方向を目指す二人が作り上げた意欲作で、曲はすべて二人のオリジナル作品だ。オーソドックなジャズを好む方には少々、難解かもしれない。

 その後のマクラフリンは現在もまだ一線で活躍しているが、サーマンの噂は余り聞かない。恐らくヨーロッパで活動しているものと思うが・・・。

 LP盤。1970年録音(推定)。John Mclaughlin(Gt),John Surman(B.sax),Karl Berger(P),Stu Martin(Ds),Dave Holland(B)
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2007年12月28日

「GREAT CONNECTION」Oscar Peterson Trio

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 先日惜しくも亡くなったピーターソンは絶大な人気を持ち続けていた。それ故、数え切れないほどのアルバムを残した。

 私にジャズの素晴らしさを目覚めさせてくれたのが、ピーターソンの演奏だったし、ジャズ・ベースの醍醐味を知らしめてくれたのが、ピーターソンの長年の相棒、レイ・ブラウンだった。

 天性のものとしかいいようがないピーターソンの類稀なるリズム感、ドライブ感、ダイナミックさに圧倒され、鍵盤の端から端までを猛スピードで往復する彼の指の動きに目を見張り、そうかと思えば、玉を転がすような繊細なタッチから生まれる美しいメロディーライン等々、誠に素晴らしい。

 彼のレコードをかける度に感心するのは、強靭なタッチだ。余りにも強烈で、針が飛ぶのではと心配になるほどだ。一つ一つの音にガシっとした芯が通っている。タッチの強弱の幅が大変大きいので、表現の幅も大きくなる。やはり、楽器は大きな音を出せる者が有利だ。大きな音を出せるから、小さな音も生きてくる。ライブでヘナヘナとした貧弱な音を聴かされると、私などイライラしてくる。

 ピーターソンのような強力なリズムについて行くベースも大変だろうなと思ってしまう。だがそのような彼の凄さを最高の形で引き出したのがやはり、レイ・ブラウンだ。全く対等といっていい見事なインタープレイだった。だから、ブラウンの入ったピーターソン・トリオのアルバムであれば、恐らくどれでも当たり外れはないと思う。それほど素晴らしい二人だった。

 ブラウンが音楽プロデューサーに専念する為にトリオを脱退した時は、一体、このトリオはどうなるのだろうと心配した。余りにも偉大な存在だったからだ。
 
 ブラウンの後を継いだプレーヤー達は短いサイクルで交代して行った。サム・ジョーンズ、ジョージ・ムラーツ、ニールス・ペデルセンといったところが実力者で、他にも何人か務めた。私もブラウン後には関心があったから、新作が出ると買い込んだ。

 だが、やはり不満が残った。どうしてもブラウンと比較してしまうからだ。そんな中でも、ムラーツにはかなり期待した。テクニックは申し分ないし、音色も私好み。しかし、ピーターソンのプレイとは何か違和感を覚えた。例えて云えば、レイ・ブラウンがビル・エバンストリオでベースを弾くような感覚と似ている。水と油の関係に近い。これは上手いとか、下手とかの問題ではない。カラーの違いだ。その後、ムラーツはテナーのスタン・ゲッツと活動するが、そこでは水を得た魚のように素晴らしいベース・プレイを展開した。私もこのあたりからムラーツの大ファンになる。

 やはり、ピーターソントリオで務まるのはブラウンしかいないか、と思ったが、やがて注目したのがこのアルバムでも弾いているペデルセンだった。ドライブ感のあるビート、はずむような音色はピーターソンのピアノによくマッチした。クラシックで鍛えたテクニックは圧倒的で、音程も正確。複雑なリズム、シンコペーションによるピアノとのユニゾンにも楽々とついて行く。やっと、よき相棒を見つけたと思った。

 以前にも書いたが、ペデルセンのアドリブ・プレイには今ひとつ好きになれないものがある。といっても、初めて彼の速弾きプレイを聴いた時は度肝を抜かされたが・・・。

 だがここでのペデルセンは、そんなバカテクをいくらか押さえ気味にして、しっかりとピーターソンをバックアップしている。それが実にぴったりと決まっていて、聴いていても気持ちがいい。

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 レイ・ブラウン以外のピーターソン・トリオのアルバムなら、まずこの一枚を薦める。録音も秀逸。CD盤もあるはず。

 LP盤。1971年録音。Oscar Peterson(P),Niels Pedersen(B),Louis Hayes(Ds)
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2007年12月25日

オスカー・ピーターソン亡くなる

 ジャズ・ピアノの巨匠、O.ピーターソン氏が23日に亡くなったそうだ。享年82歳。今の時代ではまだ早すぎた死ではなかろうか?残念な気持ちが勿論強いのだが、一方では「やはり・・」という気持ちもある。ここ数年のピーターソンの健康状態は余り良くなかったようだし、彼の体調を心配する記事をよく目にするようになっていたからだ。

 もう10年以上も前だったと思うが、ピーターソンが日本でライブ公演をしたことがあった。勿論、トリオ編成で、ベースが私の大好きなレイ・ブラウン、ドラムが確か、ジェフ・ハミルトンだった。

 私は、青山の「ブルーノート」でのライブに足を運んだ。料金はワン・ドリンク付きで12,000円。「高えーなあ」と思ったが、これを逃すと、ピーターソン・トリオを間近で聴けるチャンスはもう無いかもと考え、なけなしの金をはたいて予約した。しかも、わが美人妻からは、「私も聴きたーい。連れてって!」と半ば脅迫的に迫られ、仕方なく、2枚分を予約した。二人で24,000円だ。「一体私の毎月の小遣いがいくらだと思っているのか」と、毒づきたかったが、後が怖いので、渋々購入したわけだ。

 当日、会場に到着すると、既に時間前から長い行列が出来ていた。さすがにピーターソン人気の高さを再認識させられた。店内に入り、席に案内されると、ステージがすぐ近くの中々上等の場所だった。しかし、一人でも多くの客を入れようとしたのか、テーブルとテーブルの間隔が大変狭く、しかも隣の席とも余裕がなく、窮屈だった。

 やがて開演時間になり、まず、J.ハミルトンが登場。ドラム・セットのイスに座った。続いて、R.ブラウンが姿を現した。まだまだ元気そのもので、颯爽と歩いてステージに上がった。そして御大ピーターソンが登場した。それも客席の後ろから車イスに乗っての登場で、マネージャーらしき男が押していた。「あのエネルギーの塊みたいな人が車イスとは・・」と、いささかショックだった。軽い脳梗塞で倒れたことがあったので、どうもその影響らしかった。

 ステージの下で車を降り、男性二人に両脇を抱えられるようにして、ピアノのイスに座った。だが、弱々しかったのはそこまで。ピアノのイスに座り、両手を鍵盤の上に置いた瞬間から、ピーターソンの世界が繰り広げられた。超絶技巧ともいえるテクニックは安泰で、縦横無尽に鍵盤上を駆け巡る指の動きには圧倒された。それに対して、涼しい顔で絡み付いていく、ブラウンのベースもまた見事だった。ハミルトンもステディなリズムを刻み、安定感があった。

 黄金時代のピーターソン・トリオといえば、ブラウンのベースにエド・シグペンのドラムだった。ブラウンも先頃亡くなってしまい、淋しい限りだ。

 何かアルバムを紹介しようと思ったが、それはまた別の機会にしよう。
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2007年12月17日

「The Legendary Joao Gilberto」

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 前回書いたS.ゲッツのアルバム紹介で、ボサノバについて少し触れた。今回はボサノバの産みの親、J.ジルベルトのアルバムだ。

 ボサノバの歴史は1958年に始まったと言われている。1950年代、ブラジルのリオには、10代、20代の若者たちの間から、新しい音楽の流れが起こり、何かが生まれる様相を見せ始めていたという。

 丁度その頃に、ブラジルの田舎町からリオに出てきたのが、ジルベルトだった。その時すでに彼のギターとボーカルは、誰にも真似の出来ないスタイルだったらしい。

 1958年、エリゼッチ・カルドーゾという女性ボーカリストが「想いあふれて」を録音した時、ジルベルトはバックでギターを弾いた。その数ヶ月後、同じ曲を今度はジルベルト自身が歌って録音した。実にこの曲からボサノバの歴史が始まったと言える。

 この唄はあの有名なA.C.ジョビン作曲によるもので、作詞のヴィニシウス・デ・モライス、唄とギターのジルベルトの3人による合作はこの後、数々の名曲を生み出していく。

 紹介するアルバムは先に触れた1958年の「想いあふれて」から始まって、1961年までの間に録音された曲を集めたものだ。ボサノバの原点とも云うべき曲が多数収録された貴重なものだ。云ってみれば、ボサノバの歴史であり、ジルベルトの歴史そのものである。

 それにしてもジルベルトの唄とギターの魅力はどうだろう。ノン・ビブラートで唄う彼のボーカルはボサノバのリズムによくマッチする。ぶっきら棒で、なんだか気だるくなるような唄い方。しかしよく聴いていると、シンコペーションの連続だ。油断していると、頭がどこだか混乱するほどだ(笑)。しかも、歌いながらつける彼のギターリズムもシンコペーションばかりだから、リズムが複雑に交じり合って、緊張感すら漂ってくる。特異なリズム感の持主としか言いようがない。

 38曲ものたくさんの曲が収録されているが、1分少々の短い曲が多いからだろう。その内の12曲がジョビンとの共作だが、ジョビンの作曲家としての才能は凄いものだ。「デサフィナード」「ワン・ノート・サンバ」を始めとして、沢山の名曲を残した。

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 本物のボサノバを聴きたい方にはお奨めです。
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2007年12月07日

「STAN GETZ QUARTETS」 STAN GETZ

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 このアルバムはゲッツがまだ若かりし頃、1949年から50年にかけて録音されたものだ。卓越した彼のテナーの音色、テクニックは今でも色あせることがない。

 コルトレーンとも違う、ロリンズとも違う、或いはホーキンスとも全く肌合いの違う音だ。クールな、と表現するのがピッタリくる音だ。

 一般に彼の名前を広く知らしめたのは、やはり、60年代に大ヒットしたあのボサノバ・ナンバーを集めた作品だろう。「JAZZ SAMBA」というアルバムだったかな。

 ボサノバのリズムとそれにからむギターの和音の響きが、当時は最高にお洒落な音楽に聴こえたものだ。その垢抜けたサウンドには、ゲッツのクールなテナーの音はぴったりマッチした。もし、ロリンズやコルトレーンが演奏したら、決してヒットしなかっただろう(笑)。

 ボサノバが大変ヒットしたため、「ボサノバのゲッツ」というイメージが強くなってしまった感があるが、しかし、彼の真骨頂は唄物の演奏にある。

 バラードであろうが、アップテンポであろうが見事な演奏をする。とにかく音色が美しいから、バラードを吹かせたらピカ一だし、アップテンポにおけるアドリブではむしろ豪快なプレイを展開する。流れるようなメロディックなアドリブは本当に素晴らしい。このアルバムでもお馴染みのジャズナンバーが中心だ。

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 もう大分昔のことになるが(30年以上前だったか・・)、ゲッツが来日したことがあった。今でも現役のジャズ・ミュージシャンである友人から「ゲッツのリハーサルを見学できるけど、よかったら一緒に行かないか?」と誘われた。勿論、すっ飛んで行った。

 その時、意外に思ったのが、ゲッツの音だった。 マイクを通さない音がいやに抜けが悪く、モコモコした音。調子が悪いのかなと心配になった。これと同じような経験がもう一つある。ジョー・ヘンダーソンのリハーサルでも同じ感想を持った。

 所が本番になって、マイクを通してPAから聴こえてきた音は正にゲッツの音だった。リハーサルだから力を抜いていたのか、それとも、マイクの使い方に精通していたからなのか、今もって分からない。

 やはり偉大なテナーマンだ。

 CD盤。1949-1950年録音。Stan Getz(Ts),Al Haig(P),Gene Ramey(B),Stan Levey(Ds),Tommy Potter(B),Ray Haynes(Ds),Percy Heath(B),Etc.
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2007年11月27日

「FOR DJANGO」 JOE PASS

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 J.パスは私の大好きなギタリストだ。W.モンゴメリーを「動」とすると、パスは「静」といったタイプだろうか。決して感情に流されず、理知的で、しかも繊細で、隅々まで神経の行き届いた演奏を繰り広げる。それも淡々とした演奏だ。

 その淡々と弾いているように思わせるプレイが彼の凄い所で、実はとんでもないテクニックと図抜けたハーモニー・センスを駆使して弾いているのだ。とても真似の出来るものではない。「超絶技巧」ともいえるテクニックで、それは完璧としか云いようがない。もうため息が出るほどだ。

 昔のジャズギター少年は、W.モンゴメリーかK.バレルあたりに夢中になる者が多かったが、最近はパスが多いと聞く。良い傾向だと思う。彼の演奏には、奇をてらったり、やたらに曲芸まがいみたいな弾きかたをすることは決してない。そのような弾きかたで彼に対抗しても、無駄な抵抗というものだろう。

 彼がギターを始めたのは9歳の時だと言う。12歳の時に、ジャンゴ.ラインハルトの演奏を聴いて一気にジャズに目覚めたらしい。「雲」(NUAGES)という曲を必死になってコピーしたと言う(この曲は私も好きだ)。その後も益々ジャンゴにのめり込んでいくのだが、ある時、ジャンゴのインタビュー記事に「自分が尊敬しているギターはチャーリー・クリスチャンだ」と書いてあるのを読み、尊敬するジャンゴが尊敬するほどのクリスチャンとはどんなギタリストなのかと気になって、レコードを手に入れて聴いた。

 その瞬間にクリスチャンに打ちのめされ、今度は彼にのめり込んで行く。これがパスのプレイはクリスチャン派と言われる由縁だ。

 パスについてはこれからも紹介することがあるので、これ以上は書かない。肝心のこのアルバムは、パスをジャズの世界に導いてくれたジャンゴに捧げたものだ。一聴の価値あり。面白いのは、ピアノの代わりにリズムギターが入っていることだ。

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 CD盤。1964年録音。Joe Pass(Gt),John Pisano(Gt),Jim Hughart(B),Colin Bailey(Ds)

 
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2007年11月07日

「Ray Brown Monty Alexander Russell Malone」

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 「好きなジャズ・ベーシストを3人挙げよ」と言われたら、迷い無く、第一番目にレイ・ブラウンの名前を出す。あとの二人は迷うのだが、ジョージ・ムラーツとポール・チェンバースかな・・・。5人と言われれば、スコット・ラッファロと現在活躍中のクリスチャン・マクブライドを加える。

 勿論、他にも沢山の名プレーヤーがいるので、これら5人の中に入れない事は申し訳ないほどだ。例えば、ロン・カーターだって大変好きだ。但し、バックでサポートする時の彼のプレイが好きなのであって、前面に出たり、ソロ・プレイに対してはどうしても好きになれない。理由は幾つかあるのだが、「生意気な」と取られそうなので、敢えて書かない。また、ニールス・ペデルセンもすごいプレーヤーだと思う。音程は正確無比だし、テクニックは完璧、音色も満点と、言う事がないのだが、アドリブ・プレイはロン・カーター同様、今ひとつ好きになれない。テクニックがありすぎて、なんだかメカニックな演奏に聴こえてしまう。面白味に欠けるというのだろうか・・・。だが、デビューした頃の彼の演奏を聴いた時はその凄まじいテクニックに仰天したものだった。

 R.ブラウンはペデルセンほどのテクニックはないが、それでも相当なものだ。何より魅力的なことは、音色の素晴らしさだ。彼の音を聴いただけで、私は痺れてしまう。2ビートにしても4ビートにしても、弾力性のあるビートは最高だ。アドリブ・プレイもやたらに音数を多くすることなく、実に効果的な音を選んでプレイする。私にとっては、ジャズ・ベースの神様であり、教科書だ。

 大学1、2年生時は、ベースを担当していたので、夢中になって練習したのだが、よくブラウンの4ビートを参考にして音の選び方を勉強した記憶がある。

 このアルバムはR.ブラウンのベース、M.アレキサンダーのピアノ、そしてR.マローンのギターによるドラムレスのトリオだ。ドライブ感に溢れたブルージーなアレキサンダーのピアノとブラウンのベースは良くマッチする。ギターのマローンは現在女性ボーカリスト人気No.1のダイアナ・クラールと一時活動していた。その頃に彼の演奏を聴いて、良いギタリストだなと注目していた。堅実なプレイをする相当な実力者だ。バーニー・ケッセルの影響を強く受けているように思う。

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 残念なことに、このアルバムの録音後4ヶ月足らずの2002年7月、ブラウンは急逝してしまった。その日はゴルフ・コースに出て、ホテルの部屋に戻り体を休ませていたのだが、そのまま帰らぬ人となってしまった。その夜にはライブの予定があったのだから、本人も周りも寝耳に水だったに違いない。享年75歳。やはり、早い死だったと惜しまれる。

 ベースの音に浸りたい方は勿論、ピアノやギター・ファンにもお奨めだ。

 CD盤。2002年3月録音。Ray Brown(B),Monty Alexander(P),Russell Malone(Gt)
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2007年10月24日

「100 YEARS OF JAZZ GUITAR」・・・にサム・コキの名前が?

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 ジャズ・ギターの歴史はおよそ100年に及ぶらしいが、その100年間に大きな足跡を残した偉大なプレーヤーばかり65人を選び、年代順に網羅した貴重なアルバムだ。ボリューム感溢れる豪華な4枚セットになっている。恐らく限定盤だろうから、現在手に入れることは難しいかも知れないが、ネット検索すれば見つかる可能性はある。

 私の乏しい知識の中から思い当たる色んなプレーヤーの名前はすべて取り上げられていると言ってよい。むしろ、知らない、聞いたこともない名前の方が多いくらいだ。

 ジャズ・ギターといっても、戦前と戦後とではその扱いは大きく異なる。戦前はジャズ・ギターなどという言い方は無かったであろうし、ジャズ以外のブルース、カントリーあるいはハワイアンも全て同じ範疇に入れられていたようだ。

 そういえば日本でも、ジャズの専門誌「スイング・ジャーナル」のプレーヤー人気投票で、「その他の楽器部門」でバッキーさんが一位になったことがあった。ウソのようなホントの話だ。

 沢山のプレーヤーが紹介されているから、一人一人全員を取り上げる訳にはいかないが、一つ勉強になったのは、本当の意味でのジャズ・ギターの始祖は「エディ・ラング」という人であることだった。私は勝手に、「ジャンゴ・ラインハルト」か「チャーリー・クリスチャン」だろうと思っていたから、意外だった。

 実はこのアルバムを記事で紹介することは全く考えていなかった。誰にでも楽しめるようなものではないし、どちらかといえば、マニアックなものだからだ。

 だが気が変わったのは、この中にハワイアン・スチール奏者も取り上げられているからだった。ギターの歴史を作ってきた偉大なプレーヤー達に混じって選ばれたのは、サム・ムーア(8弦スチールギターの考案者。1887年生)、ベニー・キング・ナワヒ(スラック・ギター。1899年生)、ご存知のソル・フーピー(1902年生)、ロイ・スメック(1909年生)、エディ・ブッシュ(1911年生)といったプレーヤー。そしてなんと、先日、紹介したハワイアン・アルバムのサム・コキ(1900年生)が入っているのだ。やはり、大変な人だったのだ。このアルバムの批評でも絶賛されているのは嬉しい。

 何故彼が選ばれたかというと、演奏が素晴らしいことは勿論だが、ここに収録されている「Minnehaha」の演奏(1934年)が、電気を通したギターのソロを初めてレコードに収めたという歴史的価値のあるものだからだ。そうか、C.クリスチャンより早かったのか・・・。

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(12曲目にサム・コキの名前が載っている)

 そのような偉大なプレーヤーであるにも拘らず、日本は勿論、ハワイでも過小評価されているのではないだろうか?残念なことだ。

 最後に欲を言えば、ジュールス・アー・シーやバディ・エモンズも入れて欲しかった。
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2007年10月13日

「MOODSVILLE」THE TOMMY FLANAGAN TRIO

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 日本にはT.フラナガン・ファンが結構多いと思う。私も大好きだ。

 実に渋い、味わいのある演奏をする。

 普通、ピアニストは幼少のころから練習を始めると思うのだが、この人は11歳になってから始めたらしい。それまでは、6歳から始めたクラリネットを勉強していたそうで、珍しいケースだ。わずか4年後の15歳でプロになったというから、凄い才能を持っていたことが分る。それも手始めに、デクスター・ゴードンのグループに加わったというのだから、恐れ入る。

 同じジャズ・ミュージシャン仲間からの評価が大変高く、その為、数多くのプレーヤーと共演している。スター・プレーヤーとしてよりも、サイドマンとしての評価だった。特に唄伴の上手さでは定評があり、エラとの活動は有名だ。

 1950年代後半から60年代初めには自己トリオを組んだこともあったが、1975年頃から本格的に自己グループの活動を活発化させていく。

 このアルバムは彼の初期の自己トリオによる録音だ。この作品の前には、「OVERSEAS」という名盤を残した。この2作の録音以降、彼のリーダーアルバムは吹き込まれなかったため、特に「OVERSEAS」はファン垂涎の的になり、一時は、一枚、数万円もの値段がついたことがあった。いづれこのアルバムも紹介したい。以前にも紹介したいと書いたような気がするな・・・。

 さすがに唄伴の名人だけあって、唄ものは誠に素晴らしい。

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 CD盤。1960年録音。Tommy Flanagan(P),Tommy Potter(B),Roy Haynes(DS)
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2007年09月28日

「HI-FLY」JAKI BYARD TRIO

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 J.バイアードは私の好みのピアニストの一人だ。

 どのような系統のプレイをするのかと言われるとちょっと困ってしまう。色んな人の影響を受けていることは分るのだが、曲によってそれらを使い分けるのでなかなか一つのカラーに決めることができない。

 モンクやセシル・テイラーのようなプレイをするかと思えば、ブルージーな演奏もする。また、音数も少ない渋い演奏も見事にこなす。トータルでの音楽性が大変高くなければ、このような幅広い演奏はできまい。

 バイアードの名前を世間に知らしめたのは、やはりベースのC.ミンガス・グループで活躍するようになってからだろう。彼はここで、ピアニストだけでなく、アレンジャーとしてもミンガスを支えた。

 彼が最も影響を受けたのはファッツ・ウォーラーらしいが、C.テイラーからも受けている。また大変器用な人で、ピアノのみならず、サックス、トランペット、トロンボーン、ギター、ドラムス、それにバイブもこなしたというから、マルチ奏者だ。だから、いろんな色をだせるのだろう。


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 このアルバムでは、「LULLABY OF BIRDLAND」が凄くいい。簡潔明瞭なアドリブを展開し、思わず一緒に歌いたくなってしまう。共演しているベースのロン・カーターのバッキングも素晴らしい。

 CD盤。1962年録音。Jaki Byard(P),Ron Carter(B),Pete La Roca(Ds)

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2007年09月14日

「UP,OVER & OUT」 Eric Alexander 4

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 E.アレクサンダーは最近でこそ、日本でも中々人気の出てきたテナー・マンだ。この作品は彼がまだ若干25歳の時に録音されたもので、恐らくデビューアルバムと考えられる。

 もう10年以上も前に、郊外で車を走らせていたら「ディスク・ユニオン」の看板が目に入った。私は、レコードやCDショップを見つけるとそのまま通り過ぎることが出来ない。

 車を止め、店内に入った。そこは輸入盤を専門に置いている店だった。何か目ぼしいものがあるだろうかとジャズ・コーナーを漁って見た。しかし、これといったものはなくすぐに出ようとした。すると、隅の方にダンボール箱に無造作に入れられたCDが目に止まった。「どれでも500円」と書いてあった。私は特価品には目がない。

 500円といっても海賊盤ではないし、れっきとしたレーベル品だ。しかし、安いだけあって、売れそうもないものばかり。ほとんど無名ミュージシャンのアルバムだった。在庫整理が目的だったのだろう。だが、500円は魅力なので、なんとか1枚くらいは買いたかった。そこでアルバムに収録されいる曲名を頼りに選ぶことにした。そうやって何とか10枚ほど購入した。10枚で5000円だから、全部がはずれでもいいやという気持ちだった。

 家に帰り、早速聴いてみた。ボーカルものも何枚か混じっていた。だが、売れないだけあって、どれもこれも駄作ばかり。1,2曲聴いては、次々とCDを取り替えて聴いた。5000円がムダだったかなと落胆し始めたとき、ある一枚に耳が立った。いかにもテナーらしい図太い音で豪快なアドリブを展開する。

 「おっ!いいじゃん」とそのまま全曲聴きとおしてしまった。名前を確かめると「Eric Alexander」と印刷されている。25歳の時に吹き込まれたらしいが、荒削りながらも魅力に溢れていた。

 現役ジャズミュージシャンである友人の何人かにこのプレーヤーのことを聞いてみたが、いづれも、全く知らないと言っていた。それから数年して日本でも人気が出てきて、時々日本公演もしているらしい。

 若いのだけれども、どちらかと言うと古いタイプの演奏だ。デクスター・ゴードンやジョージ・コールマン、或いはハンク・モブレーを彷彿とさせる。しかし、やはり若いから、所々では新しい感覚のフレーズも聴かせてくれる。

 収録されている曲はほとんど、スタンダードや有名なジャズナンバーが多い。この中では「Eronel」が私のお気に入りだ。セロニアス・モンクの作品だが、じつに伸び伸びと演奏している。また、ベースのJohn Oreのソロも光る。
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 メンバーにはピアノのHarold Mabernが共演している。この人は大ベテランで、かつてはライオネル・ハンプトン(Vib),J.J.ジョンソン(Tb)、リー・モーガン(Tp)といった錚々たるプレーヤーと仕事をした。マイルスとも経験があると聞いている。しかし私の好みから言わせて貰うと、今一つ好きになれない。理由ははっきりしている。まず、音数が多すぎる、だからどうしてもうるさく感じる。また、プレイに雑なところがあり、時々イライラさせられる。でも、上手いことは認める。集中力が高まり、プレイにはまった時は素晴らしい演奏をする。

 また、ベースのJ.Oreも素晴らしいキャリアを持っている。レスター・ヤング、ベン・ウェブスター、コールマン・ホーキンス、バド・パウエルといった巨人達と共演している。音程も正確で、音色も私の好みだ。

 CD盤。1993年録音。Eric Alexander(Ts),Harold Mabern(P),John Ore(B),Joe Farnsworth(ds)

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2007年09月06日

「Love Walked In」 Steve Kuhn Trio

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 S.Kuhnというと、名前からしてヨーロッパのジャズ・ミュージシャンと思いがちだが、実はアメリカのニューヨーク生まれだ。しかし、ドイツ人の血を引いている。

 大変頭の良い人で、ハーバード大学出身の学士だ。そういえば、ジャズマンにはこういう人が多いような気がする。キーボードのハンコックも何かの博士号を持っているらしいし、テナーのジョシュア・レッドマンはハーバードを首席で卒業して弁護士資格を持っているとか。幾つもの才能を持っていて羨ましいが、可愛げがないなあ・・(笑)。

 Kuhnの演奏を聴いたことのない方には特にお奨めする。非常に聴き易く、分りやすいアドリブをする。ほとんど、スタンダードばかりを取り上げるが、洗練されたハーモニー感覚で繰り出される演奏は魅力的だ。

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 かつては、ケニー・ドーハム、スタン・ゲッツ、アート・ファーマーといった巨人たちと共演したが、現在は自己トリオでヨーロッパを中心に活動しているようだ。

CD盤。1998年録音。Steve Kuhn(P),Buster Williamas(B),Bill Stewart(Ds)
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2007年08月28日

「SOULAR ENERGY」 THE RAY BROWN 3 featuring GENE HARRIS

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 G.ハリスはかつて、「ザ・スリー・サウンズ」のリーダーとして人気の高いピアニストだった。オスカー・ピーターソンの影響を強く受けたと思われる強靭なタッチによるエネルギッシュなアドリブは迫力があった。

 スリー・サウンズを解散してからは、ぷっつりと消息を絶ち、話題に上ることもなくなった。しかし実際は、演奏をやめていたわけではなく、小さな町のホテル専属ピアニストとして毎晩演奏していたらしい。

 これを惜しんだのがベースのレイ・ブラウンで、田舎でくすぶる彼をなんとか表舞台に再び引っ張りだそうと、このアルバムに登用した。そして見事にカムバックを果たした。

 本来であればジーン・ハリス・トリオとするべきなのだろうが、レイの果たした力による所が大きいからレイ・ブラウン・トリオとしたものと思われる。

 ここで聴かれるハリスの演奏は誠に素晴らしい。それをサポートするブラウンのベースもまた素晴らしい。強靭なタッチは変わらないが、むしろ、スリー・サウンズ時代よりも洗練されたプレイに変わっている。

 特に「TAKE THE 'A' TRAIN」は秀逸で、痺れるような演奏だ。超スロー・テンポによる演奏だが、さすがにブラウンのリズム・サポートは安定しており、そのゆったりとしたリズムに気持ちよく身をゆだねることができる。

 録音もすばらしい。CD盤も出ているがLPの方が私は好きだ。ベースの躍動感が違う。ピアノの音色も深みがある。

 ちょっと話がそれるが、「ザ・スリー・サウンズ」と「ザ・スリー・サンズ」を混同しないで下さい。カタカナ読みすると、似ているので間違いやすいが、「THE THREE SOUNDS」と「THE THREE SUNS」で、全く別のグループだ。

 「THE THREE SUNS」といえば、古い方であればご存知の方も多いに違いない。かつてはヒット・パレード番組でもいつも上位にランクされたからだ。完全にインストのグループで、3人が色々な楽器を弾きこなし、独特のサウンドを出していた。例えば、「魅せられしギター」とか、「ジェルソミナ」「誇り高き男」など大ヒットした。

LP/CD盤。1984年録音。RAY BROWN(B),GENE HARRIS(P),GERRYCK KING(DS),EMILY REMLER(GT)

  
 EMILY REMLERは女性ジャズ・ギタリストで、一曲のみ参加している。残念ながら、大分前に亡くなったが、女性ギタリストの草分け的存在だった。

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2007年08月08日

「THE IN CROWD」 RAMSEY LEWIS TRIO

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 色々なジャンルの音楽ファンが存在するが、ジャズ・ファンは、どちらかと言えばマイナーの部類に入るだろう。しかし、マイナーである分、好きな人には「狂」のつくマニアが多いように感じる。私もその一人なのかもしれないが・・・。これはハワイアンファンにも当てはまることだろう。

 そんなマイナーなジャンルにもかかわらず、稀に一般大衆に受け入れられるような大ヒットが生まれることがあるから面白い。

 以前にも触れたが、ジャズナンバーでこれまでに大ヒットした曲というと、アート・ブレーキーの「危険な関係のブルース」や「モーニン」、デイブ・ブルーベックの「テイク・ファイブ」、キャノンボール・アダレイの「マーシー・マーシー・マーシー」、ジミ−・スミスの「ザ・キャット」などが浮かぶ。そして今回紹介するラムゼイ・ルイスの「ジ・イン・クラウド」。

 ほかにもいくつかあったが、上記の演奏に比べると、ポピュラーに近いので、ちょっと挙げにくい。ごりごりのアドリブ演奏の入った曲がヒットすることは大変珍しいことだ。

 さて、この「ジ・イン・クラウド」だが、大学時代にラジオから流れてきた音を聴いて、鳥肌がたった。なんと格好いい演奏なのだと感激した。それまで、ブルース・フィーリングに溢れたこういうピアノのサウンドは聴いたことがなかったから、誠に新鮮だった。

 すぐにレコードを手に入れ、繰り返し聴きこんだ。お陰で、すっかり頭に入ってしまい、アドリブまで一緒に歌えるようになってしまった。

 この曲以外にも聴き所がある。共演しているベースのEldee Youngのプレイが光る「テネシー・ワルツ」が面白い。ワルツを4/4拍子に変え、ベースをセロに持ち替えて演奏しているが、これが実にユニークで、笑ってしまうくらい見事だ。ここではラムゼイも伴奏にのみ徹し、イントロからエンディングまで全部、エルディーにソロを取らせている。実に楽しい演奏だ。

 このアルバムはライブ録音であるためか、録音そのものは余り良いとはいえない。しかし、会場の熱気、興奮がよく伝わり、また、彼らの黒人特有の強力なリズム、ブルース感覚に溢れた演奏は文句なく楽しめる。

 LP盤。1965年録音。RAMSEY LEWIS(P),ELDEE YOUNG(B),RED HOLT(DS)
ラベル:Ramsey Lewis
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2007年07月27日

MATT DENNIS PLAYS AND SINGS MATT DENNIS

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 マット・デニスはピアノの腕も達者なボーカリストだ。また、作曲の才にも恵まれ、数々のヒット曲を生み出している。彼の出世作になった「Everything happens to me」を始めとして、最も有名な「Angel Eyes」「Will you still be mine」などなど、なんと1000曲近くも残したというから驚きだ。これらの曲は多くのジャズプレーヤーに好まれ、いわばスタンダードになっている。コーラスのフォーフレッシュメンもよく唄っていた。

 このアルバムでは、紹介した曲は勿論、全曲彼のオリジナル作品で占められている。
 
 彼の唄は洗練されており、粋であり、お洒落であり、洒脱だ。恐らく、彼自身が相当に粋な人に違いない。スキャットも得意だが、ピアノも上手いから、唄とピアノをハモらせてみたり、自由自在に展開する。自分で伴奏をつけるのだから、タイミングはピッタリだ。

 「Everyting happens to me」は私のお気に入りの曲で、時々聴きたくなると、レコードを取り出す。

 そういえば日本にも昔、マットのように弾き語りの上手い人がいた。乾宣夫だったかな?この人も唄と共にピアノが上手かった。凄くお洒落な人で、いつも身だしなみは黒で統一していた印象がある。

 マットは1914年に生まれ、2002年、88歳で亡くなった。


LP盤。録音年不明。Matt Dennis(Voc/P),Gene Englund(Ds),Mark Barnett(B)
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2007年07月19日

「Ballads」 JOHN COLTRANE 4

J.Coltrane_ballads.JPG 

 このアルバムは余りにも有名なので、知っている方、持っている方も多いかなと思う。わざわざ紹介するのも気が引けるほどだ。

 好きなジャズ・アルバムを5枚挙げよと云われたら、迷わずこの一枚を加える。

 実はこのアルバム、5枚も所有している。LP盤が3枚、CDが2枚だ。初めて手に入れたLP盤は、聴きすぎて雑音だらけになってしまった。そこで、2枚目を購入。更に何年後かに再発売されたのを機に、大切な保存用として3枚目を購入した。CD時代になりつつあり、今のうちに手に入れないともう買えないかもしれないという危機感もあったからだ。

 やがて世の中は完全にデジタルの時代。流れに乗り遅れまいとCD盤も手に入れた。所が、この最初のCD盤、どうにも気に入らず、「なんだ!CDだ、デジタルだと大騒ぎしているが、ちっとも良い音ではないではないか!」と、不満だった。

 コルトレーンのテナーは、どんなに優しく吹いても、ピーンと張った緊張感があり、音色も一聴、金属的な鋭い音だが、実は、太く、腰があり、柔らかい。楽器をフルに響かせているような魅力的な音だ。静かに聴いていると、コルトレーンの世界に包み込まれるような気持ちになる。

 だが、CD盤にはそういった魅力が隠れてしまい、腰の無いふわふわとした音になっていた。アナログの音を知っているので、余計に違和感を感じたのかも知れない。

 所がその後、新しくリマスターされたCDが出たので、迷いつつも買ってみた。するとかなり改善されており、納得した。現在発売されているものは、恐らく問題ないだろう。

 このアルバムはバラードばかりを演奏したものだ。いたずらに感傷に走らず、淡々と吹くコルトレーンの演奏は素晴らしい。ビブラートもほとんどかけない。というかストレートだ。スチールギターでこのように表現できたら最高だがなあ。

 コルトレーンは難しくてと、敬遠されている方に是非薦めたい。

CD/LP盤。1961-1962年録音。JOHN COLTRANE(TS),McCOY TYNER(P),JIMMY GARRISON(B),ELVIN JONES(DS)
ラベル:JOHN COLTRANE
posted by Boo! at 22:00| 埼玉 ☁| Comment(2) | JAZZはいかが? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月09日

「George Wallington Quintet at the Bohemia」 George Wallington 5

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このアルバムは、かつて大変な人気だったから、知っておられる方も多いと思う。

 George Wallington は1924年にイタリアに生まれ、25年には米国に移住したらしい。20歳の頃にガレスピー(Tp)に見出され、ビバップ・ピアニストとして活躍。その後もパーカーやハンプトン(Vib)とも共演しているから、大変なキャリアの持主だ。

バド・パウエルの影響を大きく受けているピアニストだが、当時は白人バップ・ピアニストとして大変な人気を集めていた。

 このアルバムは彼の最高傑作といわれたものだ。ライブ録音だが、会場の熱気がストレートに伝わってきて、昔、ぞくぞくしながら聴き入ったものだった。彼のプレイを聴くと、まさにパウエルを思わせるような左手の使い方で、そこから生み出されるリズム感、グルーブ感は凄いものだ。

 共演者はみな素晴らしい。特にドナルド・バードのTp,ポール・チェンバースのベースは秀逸。J.マクリーンのAsもいい。

 LPレコードで長い間、愛聴してきたのだが、録音も古いし、オーディオ的には余り良くなかった。しかし、そんなことはどうでもよくなるほどの演奏なので、大事にしていた。

 所が最近、CDショップでCD盤が出されているのが見つかった。値段を見ると何と1100円。限定数らしいが、即、購入してしまった。
 そして家で再生して驚いた。音が良いのだ。あの古ぼけた音が瑞々しく蘇り、驚いた。チェンバースのベース音など、実に生々しい。最近のデジタル・リマスター技術は素晴らしいなと実感した。

 かつての名盤が1100円で手に入るならと、再び店に行き、片っ端から物色した。リスト一覧を見ると、100タイトルが発売中だったが、残念ながら、そのうちの70枚くらいはLPで持っていた。それでも、10枚ほど手に入れた。これは滅茶苦茶安い。ジャズ好きな方、今手に入れるチャンスかもしれません。

 余談ですが、Wallingtonは1962,3年頃に引退してしまう。そしてなんと、エアコンのセールスマンになってしまったとか。1984年頃に一時カムバックしたが、1993年に亡くなった。

 LP/CD盤。1955年録音。George Wallington(P),Donald Byrd(Tp),Jackie McLean(As),Paul Chambers(B),Art Taylor(Ds)
posted by Boo! at 22:29| 埼玉 🌁| Comment(0) | JAZZはいかが? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月24日

「DJANGOLOGY」DJANGO REINHARDT

Django.JPG 


 ジャンゴはいわゆるジプシーギタリストの元祖だ。ジプシー風ジャズギタリストと言ったほうが正しいかな。

 彼の演奏には常に哀愁が漂い、聴く者の心に沁みこんでくる。

 彼は1910年生まれのベルギー出身だ。一家はジプシーの芸人で、父はバイオリン、母は歌と踊り。一家はキャラバン隊と共に、フランス、イタリア、スペイン、モロッコ等を根無し草のように旅を続けたらしい。

 10歳くらいから彼はキャラバンを抜け出してパリに出て、ミュージシャンを目指す。14歳のときには、シャンソン歌手の伴奏者として初レコーディングしたというから、特異な才能の持主だったのだろう。最もこの時は、バンジョーを弾いたらしい。

 やがてアメリカの音楽に目覚める。「異国の妙なる調べが私の耳を捉えて離さない」と後に語ったほどだから、相当に夢中になったのだろう。

 やがて彼のプレイに惚れ込んだ英国の楽団に引き抜かれる。この楽団ともレコーディングし、また長期の在籍も望まれたが、彼は脱退し、帰国する。

 所が、帰国して、家族と共に暮らすキャラバンから出火したことで、大火傷を負ってしまい、左手の指2本が不能になってしまう。続きを読む
posted by Boo! at 16:37| 埼玉 ☁| Comment(2) | JAZZはいかが? | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする